古川裕倫の「いろどり徒然草」7月号

グローバリゼーションとダイバーシティ

グローバリゼーションとダイバーシティは表裏一体の関係であり、グローバル企業になるにはダイバーシティの実践が必要である。

幕末に日本近海に現れ開国を要求した黒船。蒸気機関で進む鉄板の船に「大砲」を搭載している。「農業国家」から、産業革命で、「工業国家」に姿を変えた西欧。生産性が高まり、結果繊維製品などの売り先を求めて世界に繰り出した。そしてはるばる日本にまでやってきた。

他方「ゆったりまったり」の農業国・自給自足国家として独立独歩を決め込んでいた江戸幕府下の日本にとっては、突然の来客は迷惑千万であったが、その腕力で開国させられてしまった。しかし、開国してみると悪いことばかりではなく、明治人の努力と富国強兵・殖産興業という方針のおかげで、人口は4倍に増え、国力は大いに増して世界第2位のGDPの国にまで上りつめた。その途中第2次大戦敗戦で焦土となってしまったが、戦後世代の勤勉と頑張りのおかげで、また豊かになった。「ゆったりまったり」の日本にまた戻ってしまったとも言える。

しかし、今、日本に「見えない黒船」が来航している。「グローバル企業」である。インターネットなどの通信革命で世界のボーダーがなくなり、しかも、黒船同様「大砲」を持っている。

今の日本の産業について。ざっくり言うと、我が国の第1次産業(農林水産業)は、GDPの10%、第2次産業(製造業)は30%、そして第3次産業(サービス業)は60%となっている。第2次産業は日本が割合得意な分野としても、第3次産業に占める海外企業のシェアはどうだろう。ヤフー、グーグル、マイクロソフト、シスコ、オラクル、スターバックス、外資保険会社などが日本で大きなシェアを持っている。第2次産業でも、ネスレ、P&G、ジョンソン&ジョンソンなどの優秀なグローバル企業が成功を収めている。

この新しい黒船に今頃「お帰りください」とは言えない。そうではなくて、日本がグローバルに進出していかなければならない。

日本の少子高齢化で、2つのことが言える。

(1)日本市場が縮小する。国内商売しかしないと、今後30年で2割から3割の売上・利益が減る。それを言われて素直に認める経営者は少ないかもしれないが、それが現実である。だからこそグローバルに出ていかなければいけない。
(2)高齢者の割合が減らずに労働人口が大きく減るのだから、働き手の確保が必要。ダイバーシティの理解と実践が必要である。

先に述べたグローバル企業の「見えない大砲」は、具体的にはこのような武器である。

(1)「理念経営」。世界中の社員が同じ目標を持って働く。「企業理念、価値観、行動規範」などが共通。
(2)「知識マネジメント」。グローバル企業内で知識や経験を効率的にシェアする。
(3)「多様な人材の活用および多彩な知恵の活用」。つまりダイバーシティ。

他方日本丸はいかがであろうか。もちろんグローバルに健闘している企業もあるが、そうではない会社も多い。

(1)「ゆったりまったり」「成功体験体質」でなかなか変われない。イノベーションができない。
(2)日本丸にはトップに物言えないヒラメ取締役が多数乗船しているが、黒船には物言う社外取締役が過半数乗っている。
(3)ダイバーシティを自分ごととして捉えている企業が少ない。
(4)グローバル人材が不足している。

グローバル企業になるには、共通の想いを世界中の国の従業員が持ち(理念経営)、同時にそれぞれが異なる文化や異なる個人としてのアイデンティフィケーションを強く持っている必要がある。つまり、ダイバーシティを理解・実践していないと、グローバルに戦うことはできないということである。

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