講演録:経営者・管理職向け無料セミナー 「女性活躍推進に本気で取り組む時がきた! 〜男性の協力なくして女性活躍推進はない〜」

「女性活躍推進に本気で取り組むときがきた!」
〜一般社団法人彩志義塾主催のオープンセミナーから〜

記:株式会社マムズー 刑部美穂子

 2014年8月18日(月)三茶しゃれなあど5階スワン・ビーナスにて、「女性活躍推進に本気で取り組む時がきた! 〜男性の協力なくして女性活躍推進はない〜」と題するオープンセミナーに参加しました。女性活躍を推進している一般社団法人彩志義塾が、世田谷区と公益社団法人世田谷法人会の後援を得て主催したセミナーです。講師は彩志義塾代表理事で、『一生働く覚悟を決めた女性たちへ』や『女性を活用できる上司になる』(ともに扶桑社刊)など、女性の働き方や女性活用指南の著書を多数もつ古川裕倫さん。

 なぜ、女性活躍推進が大事なのでしょうか。少子高齢化により、生産労働人口の激減が確実な世の中。経済活動を支えるためには、女性に会社で活躍してもらうのが現実的だからと古川さんはいいます。いよいよ働き手が少なくなってから女性を活用しようとしても、他社の後塵を拝してしまう。だから、女性活用推進マインドを企業に取り入れ、準備する必要があるとのことでした。

 古川さんのお話で興味深かったのは、カルビーの例。「じゃがりこ」や「かっぱえびせん」で有名なカルビーは、取締役7名のうち5名が社外取締役で、2名が外国人執行役員である本部長の中にも女性が多数いらっしゃる。国籍や性別、年齢、文化の違う役員を積極的に登用し、組織経営を活性化させること(ダイバーシティと呼ばれる)が業績好調につながり、売上も株価も右肩上がりとのことでした。同社は、役員登用にあたり女性を特別扱いはしないそうです。同社には成果を出したら昇進できるが、2年連続成果がなかったらアウトという「UP OR OUT」という方針があるのだとか。女性だから何もしないで上に上がってこれると、そんな甘いことはなく、当然成果も求められるそうです。この話を聞いて、私は身がキュンと引き締まりました。

 それでは、女性活用推進を進めるために会社がすべきことは何でしょうか。日本の会社は、海外に生産ラインを作ったり、海外の企業を買収するというような非常に高度なことができるのに、なぜ女性の活用をすいすい進められないのか。古川さんは、男性の役員が必死になっていないからといいます。会社のトップが本気でダイバーシティ推進や女性活躍推進に取り組むと決めたなら、採用が変わり、研修が変わり、評価も変わる。担当役員は誰かがやってくれるだろうと逃げ腰にならず、命をかけて取り組むべきとのこと。そして、担当者がやりとげたとしたら、よくやったといわれるような社会にしていくことだといいます。

 さらに、入社してくる女性のほうが平均して能力が高いことが多いのに、日本の会社が男性役員だらけなのはなぜなのか。これについて古川さんは、自分の仕事はここまでと定義づけて、範囲内のことはやるけれど、範囲外のことはやらないという「箱に入っている」女性が男性に比べて多いのではないかと指摘します。そうして新しい仕事にトライしないでいると、いつの間にか男性社員に抜かれてしまうことになると。これには、会社員時代の私にも思い当たることがあったなと、ドキッとしました。

 さらにハッとしたのは次の事例。古川さんから参加者に、「社長から『□□について検討してくれ』といわれた部長や課長が自分の部署に戻ってきて誰かに仕事をまかせる場合、男性と女性、どちらに振りますか?」という質問がありました。これに対して「男性、女性関係なく仕事のできるほうに振る」という参加者もいましたが、「どちらかといえば男性に振ることが多い」という参加者もいました。古川さんはこれまでにもたくさんの人に同様の質問をしており、その度に「男性に振る」と答える男性が多かったとのこと。女性はまじめだから、仕事を振るとすぐに「では課長の展望をお聞かせ下さい」や「我が部署のプラスになる仕事ですか?」、「この仕事は(1)□□(2)□□(3)□□の手順でやります。よろしいですか?」と質問攻めしてくるかもしれない。でも社長から振られたばかりで何も展望がない状態だから答えられない。男性だったら直ぐに「はい、わかりました」とだけいって受ける。そして、一週間後ぐらいに案を出してくるから、上司も考える時間があるので答えられる、だから頼みやすいというのです。会社員時代の私は確実に質問攻めをするタイプでした。上司にはすでに確固たるビジョンがあって、仕事を振ってくるのだと思い込んでいたのです。そうではない場合があると考えたことがなかったので、目から鱗でした。ただでさえ、男性はセクハラ、パワハラを恐れて女性に遠慮しているのだから、なおさら男性にばかり仕事を振ってしまう。古川さんは、上司は男性部下にも女性部下にも仕事を振るべきといいます。女性に嫌な顔をされても振る。今嫌われても将来感謝される上司になろうとおっしゃっていました。
 
 講演後、質疑応答の機会が設けられました。ここでもっとも熱く議論されたのは、セクハラ、パワハラはどこまでがOKでどこからがNGになるのかということ。これに関しては、「業務上必要であるかないか」がポイントだとのことでした。男性は女性が気にする以上にセクハラ、パワハラに対して慎重で、そのことが女性活用推進に対するブレーキにもなっているとは考えていませんでした。意外な理由がわかって、女性活用推進のためのヒントをもらえたセミナーでした。

 上司は優しいだけが能ではありません。会社や女性の将来を考えて、あるときはピシーと言ってくれる上司であって欲しいと思いました。反対に女性も甘えているばかりでは成長がありません。セクハラやパワハラを含めて女性の権利の主張ばかりしていると、相手はその内「何も言わず、こちらも見ず」状態になり、「我々の会社には女性は不要」となりえません。議論も主張もするが、成果を出す女性社員となりたいものです。