古川裕倫の「いろどり徒然草」3月号

企業改革について

 
先日、「水上温泉を創生したニュージーランド人~よそ者・ばか者・若者が地域を変える~」と題して、マイク・ハリスさんによる講演会を開催した。主催は「一般社団法人彩志義塾」と「世田谷ビジネス塾」。その様子はこちらから(短い動画もあり)。

【ニュースリリース】「地方創生×企業改革×ダイバーシティ」講演開催

地方も同様であるが、企業も変化していかなければいけない。「のんべんだらり」と過去と同じことを続けていては、激動の時代においていかれる。技術の進歩、人口減少などの社会構造の変化、通信・輸送の進化、競合の進出など、企業をとりまく環境は刻一刻と変わってきている。その変化に対応できない会社は、「ゆでガエル」となってしまう。

何度も申し上げて恐縮ながら、変わろうとすると必ず現れるのが、反対勢力である。これは、過去をそのまま踏襲している時には出てこない。ジョン・コッターの「かもめになったペンギン」(ダイアモンド社)に出てくる「ノーノーペンギン」である。

私は、在日米国商工会議所のメンバーで、同会議所が主宰する講演会や勉強会によく足を運ぶ。2000社を超えるメンバーがおり、3分の1が米国の会社、3分の1が日本の会社で、後はそれ以外の国々の会社。普段聞けないようなビッグネームのスピーカーもよく登壇する。そんな同会議所でよく話題になるのが、イノベーションや変化への対応についてである。多くの外国人登壇者が、「日本人は変わらない」「日本は変わらない」と指摘する。残念なことである。その上、聞き手の外国人はもちろん、参加している日本人ですら「フムフム」と首を縦に振っている。「明治維新など、日本が大きく変わった時代もある。武士200万人をクビにしてまで変化に対応したこともあるのに」と、そんな状況を見て私は内心憤りを覚えることもあったが、確かに現代については、危機感が薄く、蛮勇を奮っての変化への対応が乏しいことは認めざるをえない。

職業としている者が言うのもおかしいが、研修にもイノベーションが必要だと思う。長年相も変わらぬ研修をし続け、イノベーションらしきことはあまりやらない。例えば、日本型ワークショップという古式泳法がある。良いところもあるが、時代にあっていないところも多い。

(1)4−6人の小グループに分けて議論をさせ、発表するという形式。
(2)スキルを磨くことや学ぶことにこだわる割には、成果が出ない。
(3)研修慣れしている受講生が多く、「知識として知ってはいるが、行動できていない」

紙面の限りがあるので、今日は、上記の(1)について考えたい。

少人数でグループを作って議論するのは、確かに意味はあると思う。
(1)大人数より、少人数の方が発言しやすい。
(2)グループ毎になんらかの結果が出る。

しかし、こればかりでは過保護だと思う。

「ナビゲーターと書記と発表者を決めてください」、「結論と~を模造紙に書いて、発表しましょう」などは、幼稚園児に言っているようだ。必ず何かの結論が出て発表してくれるのであるから、「講師にとって」は非常に「楽」ではあるが。

本当に、この従来スタイルがベストなのだろうか。

時には全体議論も必要だと思う。少し前に流行ったハーバードのサンデル先生の「白熱教室」スタイルである。すなわち、1対Nの議論。

会社での実際の会議は、全体議論か、1対Nの会議である。グループ分けして議論するなど、ありえない。失礼ながら、古式泳法と言いたい。会議でモノ言わぬ参加者は、それまでである。会議が済んでから言っても誰も聞いてくれないのが、大人のルール。自分の意見を自ら挙手して言う人が、これから必要となる。だから、同じ研修をするなら、自ら挙手して自由に発言して学ぶことである。どうせ研修なのだから、トレーニングの意味で失敗すればいい。

もちろん、そうなったら講師は大変である。意見が出すぎればまとめるのに収拾がつかなくなるだろうし、一番困るのが、意見が出ない時である。少人数方式なら、個別議論をする、まとめる、模造紙に書く、発表する、議論するなど1時間や2時間は、「もつ」。しかし、意見が出ない時は、10分も持たない。

では、どうすればいいか。

アイスブレークができるよう準備をしておく。議論を引き出すテクニックを持つ。議論に引きつける人間力を身につける。それでも意見が出ない時に備えておく必要もある。豊富な事例を用意して、参加者に説明して意見を出させる。たくさんの質問を考えてきてぶつける。脱線するような答えが来ても、しっかりと受け答えをして、進行できなければいけない
。難しい質問が飛んできて分からない場合は、素直に「分からない」と答える勇気を持つ。

「パワーポイントを読み上げるだけ」や、「古式泳法の少人数の議論」なら、専門講師はいらない。

安全運転を望む会社も多いらしい。「研修をしている」という実績が大切であり、受講者アンケートで無難な回答が得られれば、それで良しとする組織もある。

社員教育が大切なことは言うまでもないが、受講者にとって本当にためになる研修にも、上記のようなイノベーションが必要であると思う。

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