古川裕倫の「いろどり徒然草」7月号

竜馬に学ぶビジネスの要諦(第13回)

前回は部下に任せられない理由と(上司か部下かの)責任の所在
について説明したが、どうすれば任せられるかについて説明させて
いただきたい。

■任せるための「責任三原則」

 責任の所在がはっきりしないから任せられない。ここで責任を三
つに分けて、もう少し掘り下げて考えてみたい。だれがどのような
責任を持つかをはっきりさせておくためだ。

結果責任は、上司にある
遂行責任は、部下がとる
報告責任は、部下にある

この「責任三原則」を上司と部下で共有しておくと、先に述べた責
任の問題が一挙に解決し、仕事を任せやすくなる。

 上司たるもの、仕事の責任は本来上司にあることぐらいはわかっ
ているはずだ。ところが、部下が途中で投げ出したり、報告や相談
をしないで勝手に物事を進めたりするから「お前のせいだ」となっ
てしまう。いくら上司がしっかりしていても、このような部下であ
れば、責任を問われたくない。

 反対に、部下が最後まで投げ出ずことなくしっかり遂行し、(結
果だけではなく)経過報告も逐次行っているのであれば、上司は今
何が起きていて部下がどう動こうとしているのかがリアルタイムで
わかるので、必要なアドバイスや軌道修正もできる。そういう状況
下なら上司は責任を取れる。

 部下にしても、何がどこまで自分の責任であるかをわかっていな
いと、うまくいかなかったことを前もって考えてしまい、おいそれ
と「任せてください」などとは言えない。「よかれと思ってやった
のに自分が痛い目に会うなんぞ、まっぴら御免だ」ということにな
ってしまう。

 そうではなくて、「投げ出さない」という遂行責任と、「途中経
過も含めた報告をこまめに行う」という報告責任は部下にある。た
だ、結果責任は上司にある。こういう明確な仕組みができあがって
いれば、新しいことに挑戦したり、思い切った改善に着手したりし
て、前向きな組織とすることができる。

 つまり、上司が部下に仕事を任せるときにこう言えばよい。

 「この仕事は君に任せるので最後までやり遂げて欲しい。結果の
責任は私(上司)にあるから。ただし、報告はしっかりとして欲しい」

■竜馬流の任せ方―上司は部下に手柄を譲れ

『竜馬がゆく』(文春文庫)から引用したい。

「仕事というものは、全部をやってはいけない。八分まではいい。
八分までが困難の道である。あと二分はたれでもできる。その二分
は人にやらせて完成の功を譲ってしまう。そうでなければ大事業と
いうものはできない」(八巻331頁)

先に「責任三原則」を説明したが、それは基礎編である。応用編は
上に引用した文章の中にある。

すなわち「うまくいったら、上司は部下に手柄を譲る」ということだ。

結果責任は上司にあるから、失敗したら責任をとり、成功したら手
柄も上司のものとする。これではいけない。「いい仕事をしてくれ
たね。君のおかげだ」と部下に声をかけ、まさに竜馬が言うように
功を譲るのである。

反対に、「うまくいかなかったら部下も反省する」ことが必要だ。
うまくいかなかったのは上司の責任だと、知らん顔しているようで
はレベルが低い。「ここはしっかりやるべきでした」と具体的に反
省を示すことが大切である。

このように基礎編と応用編ができていると前向きな素晴らしい組織
となる。

 竜馬は、先の言葉の中で、もう一つのことを教えてくれている。
「困難なことは自分がやり、あとは人に任せればよい」ということだ。

難しい仕事はリーダーがやるという気持ちが大切で、「おもしろい
仕事は部下に任せ、嫌な仕事は自分がやる」という思いが特に若手
リーダーには必要だ。ベテランリーダーより経験や知識が不足して
いる分、自分が難しいことや嫌なことに挑戦しないと人はついてこ
ない。これを忘れないでいただきたい。


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