古川裕倫の「いろどり徒然草」 1月号

よそ者、バカ者、若者が組織を変える
~地域創生と企業改革にもダイバーシティーが必要~

ジョン・コッターの「カモメになったペンギン」という、組織改革に関する本がある。改革を成功に導くためのキーポイントと乗り越えるべき課題を、物語仕立てで分かりやすく説明している。「改革時には、必ず反対勢力(「ノーノーペンギン」という)が現れる」という教えにも、注目したい。詳しくはまた別の機会に譲るとして、変化・変革について学びたい方には役に立つ書籍であろう。

地方創生の重要性が、以前にも増して叫ばれるようになってきた。少子高齢化社会が目に見えて始まった今、人口減少の問題は、もはや誰にとっても対岸の火事とは言い難い。自分ごととして、何らかのアクションを起こしていく必要がある。何もしないでいると、いつの間にか「ゆでカエル」になってしまう。地方にとっては、発展するか衰退するか、1つの節目の時代と言える。

地域社会だけではない。ビジネスの世界においても、人口減少は大きな変化をもたらす。働き手の確保はますます難しくなる。国内市場が縮小すれば、今までと同じように国内ビジネスだけをやっている企業の先行きは怪しくなるだろう。

また、人口動態の変化に加え、日本におけるグローバルな海外企業の躍進も国内市場を揺り動かす大きな波である。大手を振って勇ましく国内へ攻め込んでくる、いわば現代版「黒船」である。ネスレ、ジョンソン&ジョンソン、P&G、appleなどの製造業や、グーグル、マイクロソフト、IBMといったIT企業など、その数多数。海外企業が日本へ参入するのは結構なことであるが、一方で、日本ももっと積極的に海外で活躍するグローバル企業を産んでいかなければならない。日本の限られた市場だけを見ていたのでは、鎖国時代と何も変らない。知らぬ間に世界からおいてけぼりをくうことになり、競争力をすっかり失ってしまうだろう。

環境の変化に対応するということは、すなわち、環境の変化に併せて「自らも変化する」ということである。イノベーションである。これが、地方創生や企業改革で求められる。過去のやり方から脱却し、新しいモノに挑戦していかなければならない。私は、地域創生にも企業改革にも両方に興味があるが、いずれも基本的な問題点や対応の仕方などは大変酷似していて、驚くばかりである。

変化に対応する際のポイントは、以下の4点である。

1、複眼でモノを見る。同じ観点からではなく、いろんな角度からモノを見る。つまり、ダイバーシティ。「ヨソ者をウチに入れない」、「その土地に長く住む発言力のある人は、新しい考え方を受け入れられない」といった話は地方創生ではよく聞くところであるが、これではいけない。企業も同様である。同じ文化で同じように育ち同じような考え方を持った人同士で議論をしても、イノベーションは生まれない。いつまでたっても枠から出られない。

2、(正当な)競争原理を取り入れる。例えば、疲弊している組織は、実力とはほぼ無関係の年功序列制度がまかりとおっていることが多い。実力のない中高年が重要ポストに座っているのは、評価制度がきちんと機能していないからである。適切な競争環境を作ることは、変化に対する原動力となる。

3、保守的な考え方は徹底的に排除する。「ヨソ者は受け入れない」「出る杭は打つ」「談合的に考える」「護送船団方式」「足の引っ張り合い」などは、適切な競争を妨害する。

4、ある程度の痛みは覚悟の上で、早めに着手する。どんな改革にも痛みはつきものである。幕末から明治にかけて、日本は明治維新という大改革を成し遂げた。しかしその裏側で、武士200万人を失職させるという、大きな犠牲もあった。差し迫る西洋列強という脅威に対応するための、重要な決断である。現在それなりに利益体質である組織は、あえてリスクを負って変化・改革する必要はないと感じるかもしれない。今すぐ変化しなくても、それですむかもしれない。しかし、ずっと変わらないままでいると、やがて組織全体に古錆びがこびりついて金属疲労を起こすかもしれない。すなわち、倒産である。組織にとって最も大きな痛手は何かを考え、決断する覚悟を持ちたい。

ある時、都内で賑わっている食堂街を見た地方の方が、次のように言われた。「さすが都会は、どのお店も隆々としていますね」。「たくさんの店が潰れていく中で、競争に勝ち残っているだけです。競争があるから隆々としています」と、私は申し上げた。多様性を受け入れ、競争環境に自ら身をおき変化していくことで、組織や社会は活気づくのだと思う。

先日、山梨県甲府市で「幹部は変化に対応し、イノベーションを起こせ」というタイトルで講演させていただいた。おかげさまで大きな共感をいただいたと、その後の懇親会で伺い嬉しい限りである。

【お知らせ】

(1)新春講演企画「みなかみ温泉を創生したニュージーランド人~よそ者・ばか者・若者が地域を変える~」を開催します。

第1部では、みなかみ町活性化の立役者”マイク・ハリス氏”より地方創生の実際についてお話を伺い、 続く第2部では、地方創生と企業改革についてのパネルディスカッションを行う予定です。

 ◇日時: 2月18日(土)16:00~18:00
 ◇場所: 駒澤大学大学会館246
     (駒沢大学キャンパスとは異なりますのでご注意ください)
 ◇定員: 80名(先着順)
 ◇費用: 3000円
 ◇申込み: コチラ
      

(2)立志塾無料見学会

 オブザーバーとして午後部の講義を無料で聴講いただけます。
 第6期は、9名の女性が学んでいます。

 ◇日時 : 2月11日(土)13:00~17:00
 ◇場所 : 赤坂見附 セミナールーム
 ◇定員 : 10名
 ◇費用 : 無料
 ◇ゲスト: 大手外資系金融役員
 ◇申込み: コチラ

 お気軽にご参加ください。

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古川裕倫の「いろどり徒然草」正月号

新年のご挨拶

謹賀新年

「男女差別は野蛮なる悪習慣なり」と明治時代に言ったのが福沢諭吉。ジェンダー・ダイバーティを推進している一般社団法人彩志義塾は、おかげさまで本年で4年目を迎え、オープンセミナー「立志塾」は4月から第7期目となります。皆様のご協力・ご支援の賜物であり、感謝いたします。

本年から女性講師陣の充実を図り、またジェンダー・ダイバーシティ以外の講演・研修メニュー(企業改革、リーダーシップ、部下育成など)も彩志義塾が提供いたします。

【お知らせ!!!】
カンブリア宮殿(1月12日、木曜、21:54−22:54)に、ジェンダー・ダイバーシティを積極的に推進し、かつ業績絶好調の「SCSK」中井戸信英相談役が出演されます。「売上が下がってもいいから残業をするな」と指示した中井戸さんの「経営者の覚悟」はものすごい。明治人の気骨を連想してしまいます。

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古川裕倫の「いろどり徒然草」12月号

どのようにして世田谷ビジネス塾主催ビジネス書大賞が選考されているか

「世田谷ビジネス塾」が来夏10周年を迎える。
 
 地元世田谷の駒澤大学の施設をお借りして、月に1度土曜日に行っている無料読書会。「参加者が本の内容や感想を他の参加者に紹介し、その後参加者が一緒に議論をする」という簡単な仕組みであるが、なかなかどうして深みがあっておもしろい。長年続いているのがその証拠であろう。毎回の参加者数は、20-30名ぐらいであるが、フェイスブックの会員は800名近い。対象書籍は、「ビジネス書、自己啓発書、歴史書(小説可)、伝記、自伝」など。純文学、恋愛小説、サスペンスなどは、コメントができないので、一応対象外とさせていただいている。

 年間7万冊もの新しい書籍が日本の書店市場に出てくるが、それらの中から面白そうな本や良書を見当てるのは大変な作業である。また、従来から売っている多くの作品の中から、自分の仕事に役に立つような良書を探し出すのも至難の技である。

 哲学者のショーペンハウエルや江戸時代の儒学者佐藤一齋など先人は、「良書を読みなさい」と言葉を残してくれているが、何が良書かなかなか難しい。また、両者は、「人は新しい書籍に目を奪われがちである」とも言っている。新刊が気に気になる我々には耳が痛い。

 「世田谷ビジネス塾」で本を読んだ率直な感想を聞き、質疑応答を進めていくと、だいたいの書籍像が現れてくる。出版社が自分のためにするお手盛りの宣伝とは違って、読者の素直な感想が聞ける。「5個満点で、星3つ」みたいに。良書のほとんどは、小難しいことは決して言わない。むしろ、読みやすく、分かりやすい。参加者は老若男女。大学生から退職組まで、男女も半々ぐらい。

 世田谷ビジネス塾は、一昨年から「世田谷ビジネス塾ビジネス書大賞」を決めている。前年紹介された本を会員が投票し、その後20名前後の選考委員が一次選考に残った4-5冊を2-3か月で熟読した上、議論して決める。選考の基準は二つ。世界に紹介したい書籍と後世に読んでほしい書籍。いずれは、これらを英語化して、電子書籍で世界に紹介したい。利害関係のないスポンサー募集中。
 
 2014年の第1回大賞は、「修身教授録」(森信三)、特別賞として「道を開く」(松下幸之助)。2015年の第2回大賞は、「逆境を超えて行くものたちへ」(新渡戸稲造)

 2015年から姉妹塾「堂島読書会」を大阪でスタートした。隔月開催。もちろん、こちらの読書会で紹介された本も大賞候補になる。

 先月から第3回ビジネス書大賞の選考が始まった。私は、塾メンバーが紹介してくれた「銀行王 陰徳を積む 安田善次郎」(北康利、新潮文庫)の推薦状を書いて投稿した。2次選考に残るかわからないが。推薦状のサンンプルとして下記したい。

 安田善治郎は、天保9年(1838年)富山に生まれ。福沢諭吉の4歳年下で、明治維新から約30年前に生まれた。安田財閥・芙蓉グループの創始者であり、のちの安田生命、富士銀行とつながった。 安田善治郎は「陰徳を積む人」として知られる。

 善治郎の父は、富山人の気性とも言える「律儀一方」な人間であり、厳しく善治郎を育てた。自らを律することや勤倹を旨とした。特に「陰徳を積め」ということを教えた。陰徳を積むとは、人に褒められたいから善行を尽くすのではなく、他人に知られることなく黙々と世のために尽くすことを言う。人知れず善行を行うことによって自分を磨く。

 ある着飾ったお金持ちがお連れとともに施設を見舞ったという話を聞いた時、これは違うと、善治郎は残念に思った。名前を出さずに善行を行うことこそが徳を積むことである。「慈善は陰徳を以って本とすべし、慈善を以って名誉を求むべからず」と父から教えられていたのだ。

 江戸に出て丁稚奉公をしている時も他の奉公人とは違う心構えを持っていた。人の出入りが多い店の土間には履物が乱雑に散らかっていた。忙しい奉公人たちは、誰かに言われるまで履物を直そうとはしなかったが、善治郎は、誰に指示されなくても履物を揃えた。自分が外出する時も、外出から帰ってきた時も、奉公人や番頭の履物も揃えている。

 ゴミが落ちていたら、さっと拾う。自分の店の土間でも、店の前でも。さらにはお使いに行く道で紙くずも拾う。誰か見ているとか見ていないとかは、関係ない。「陰徳を積む」を実践した。

 安田善治郎は、晩年自分の人生を振り返り、こう語った。「自分には人にすぐれた学問も才知もない。技能もたいしたことはないが、克己堅忍(克己と忍耐)を修養したことに関しては、誰にも負けない。富山を飛び出して、小僧として奉公し、商人として身を立てるまでの奮闘を一言で言えば、克己堅忍の意思力を修養するための努力に他ならない」

 物語のエンディングもすごいのですが、それは本を読まれてください。

◇立志塾無料見学会のご案内◇

オブザーバーとして午後部の講義を無料で聴講いただけます@赤坂見附。第6期は、9名の女性が学んでいます。

 (1)12月10日(土)13:00~17:00
    ゲスト:渋澤健さん(コモンズ投信 会長)
    詳細:https://jinjibu.jp/seminar/detl/39292/
 (2)1月14日(土)13:00~17:00
    ゲスト:阿部敦さん(富士通社外取締役)
    詳細:https://saishi.or.jp/risshijuku7th.html

ご見学希望の方はお気軽にご連絡ください。

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古川裕倫の「いろどり徒然草」10月号

定年についての考え方(その2)
〜それまでに身につけておきたいこと〜

今日はもう一度、「定年」について。私は今62歳。ちょうど同期や同じような年代が定年を迎え、千差万別な人生を送っています(送ろうとしています)。それぞれの人生にどうこう言うつもりはまったくありませんし、それこそダイバーシティ&インクルージョンです。第2の仕事をしている人、しばらくは休みたいとしている人(多くがデイトレードをやりたがるが、素人が勝てるものではない)。これにて働き終わりとする人は少ないようです。

何年先かは別にして、いずれ皆さんも定年を迎えるのでしょうから、多少なりともお役に立てそうなことをお伝えしたいと思います。

1、パソコンの技術を身につけておく。
会社にいるときは、部下やシステム担当が(内心は嫌々でも)いろいろ教えてくれる。トラブルになったら、解決してくれる。自宅ではそうはいかない。子供に教えてもらう?アマ~~イ。ずっとやってくれるはずがない。よって、自分でパソコン会社などに電話することになる。なかなか電話がつながらない。つながったら「それはハードの問題ですか、それともソフトの問題ですか?」みたいなことを言われる。「それがわからないから電話してんだ」と答えたくなる。会社に入った時からパソコンを使っている若い人なら問題ないだろうが、入社した時はワープロもなかったという昭和人間(私も)は自分でパソコンのトラブルを解決する練習をするといい。部下やシステム担当に頼らないで。独立自尊。ちなみに、最近の新人にはエクセルやワードの研修をするらしい。ちょっと前ならパソコンはお手の物だが、つい最近の年代は、スマホでなんでもこなしてしまうので、パソコンができない人がいるとか。

2、「年功序列制度の終わり」を覚悟しておく。
ただのおじさん、おばさんになる。日本人は帰属意識が高いが、帰属するところがなくなり、もはや部下は部下でなくなる。特に職位が高い人であれば、辞めた途端に、周りにいた人々がサーと引いていく。年齢や職位ではなく、人としていいつきあいを同僚や部下にもしておくこと。自分の人生を振り返って、どのグループに信頼の置ける友達が多いか考えてみると、(1)顧客はいくらたくさんいても、友達にはなりにくい、(2)学校時代の友達は、「懐かしい友達」であり「悩みや議論ができる友達」は少ないかも、(3)毎日同じ職場でいいも悪いも解り合っている同僚や先輩は、一生の友達となる可能性が高いと思う。一生の友達候補として、先輩や部下を大切にしておくことが肝要かと。

3、大企業病から脱する。
特に大会社に勤め上げた(ようとしている)人の多くが、大企業病にかかっている。自覚症状はないが、およそ次のような症状である。
(1)自分の身の安全を常に考える。「安全」と「挑戦」なら、「安全」を採る。
(2)イノベーションしない。変化を嫌う。
(3)「部下や若手に任せる」という言葉が好きで、自ら細かい仕事をしない、汗をかかない。
(4)「言うことは立派」だが、必ずしも「行動」が伴うとは限らない。
(5)「過去」を語りたがる。「明日から何をするか」の話が少ない。
(6)旅はもっぱら出張で行き、自分の金で旅をしない。

第2の人生で新しい職場を探している人は、大企業病を克服しなければならない。大企業病であった多くの先輩たちが、それが原因で第2の職場でたくさん失敗している。仕事もしないで、口だけが達者で、高給だけを望むから。

学歴や職歴を(実力より上に)詐称するのはいけないが、仕事の実力があるなら(あえて学歴や職歴を言わないで)近所の中小企業にアルバイトで雇ってもらったらいい。実力があるなら、「アルバイトのおじさん、結構できるねー」と評価をもらえて、すぐに正社員にしてくれる。そこから経営に役立つ提言をしたり、顧客開拓すると、それこそ抜擢してもらえる。「仕事がない」と言っている人は、過去の自分の地位と給料レベルを求めているだけだと思う。自分は高い給料を取れると誤解するのは残念。単に年功序列制度の下で、部下が支えてくれていただけなのかもしれない。

ご参考まで、著書「51歳からのルール」(古川裕倫、明日香出版)に第2の人生について、少々書いています。

◇お知らせ◇
9月24日(土)に交流イベント「学びのリレー~志高い塾が集う会~」を開催しました。
下記団体にご参加いただきました。

・「論語と算盤経営塾」(塾長 澁澤健氏)
・「グローバルキャリア育成塾」(塾長 福住俊男氏)
・「小倉広人間塾」(塾長 小倉広氏)
・異業種交流会「Affiliat」(代表 江頭史倫氏)
・「世田谷ビジネス塾」、「堂島読書会」(塾長 古川裕倫)
・「立志塾」(一般社団法人彩志義塾代表理事 古川裕倫)

当日の様子は下記動画よりご覧いただけます。

学び心の高い人々と志高い塾の交流を目的としました。
来年も行いますので、ご興味のある方は是非ご参加ください。

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古川裕倫の「いろどり徒然草」9月号

定年についての考え方
~終身雇用制度とパッケージの定年制度~

先月は、「働きやすさ」と「生産性」を求めていく上で、会社として残業をどのように位置づけをするか明確にしておくことが重要であると申し上げた。それもバラバラではなく、トップの意向として、役員の総意として、会社全体として、残業についてどう考えるかを決めおくべき、と。つまり、残業を是とするか、非とするか、最小に抑えることを目標とするのか、会社によって基準は違っても、どれか基準を持っておくべき。

昭和の考えでは残業も厭わぬ熱心さは「美しさ」とされ、時には評価の対象となることもあったが、今の考えでは残業も厭わぬことや有給をほぼ使わないのはブラック企業と思われて求職者からも敬遠される。グローバル化を考えても、生産性が低い企業は淘汰されていくのではないか。

今日は、定年に関して。

「定年」とはなにかと聞くと「会社を辞める年齢。会社も従業員も合意している」という答えが普通ではないだろうか。ところが、定年退職する人は「定年退職です」という挨拶はせず、「卒業しました」と言うことが多い。「定年」は辞めなければいけない期限であり、どちらかというとネガティブな感じがするから「卒業」という言葉を使いたいのかもしれない。

「定年」を英語で言うとretirement age。「retirement ageとは何か」と知り合いのアメリカ人に聞いたら、「年金がもらえる歳!」という答えであった。つまり、「年金がもらえるようになっておめでとう」というポジティブな意味が強いようだ。日本でいう定年は「mandatory retirement age」(強制定年)であり、それはアメリカ合衆国では年齢による差別とされ、違法である。航空管制官など敏捷性や安全に関する資質を問われる職業は例外であるが、基本的に年齢によって差別されることはない。

したがって、アメリカでは「◯年以上の簿記の経験を持つ経理要員募集」という求人はあるが、「経理要員募集。年齢◯歳~◯歳まで」はない。業務経験やその期間を条件とすることは構わないが、年齢での差別は違法である。

これまでの日本では、よほどの落ち度がない限りクビにはならないという身分保障と引き換えに定年で引退するという掟があったと言えるかもしれない。ただ、アメリカでは、年齢での差別はないが、決められた業務をちゃんと執行できないとクビになることもある。

定年制度について私見を一つ。着実に少子高齢化が進む日本を考えると、求人に苦労している(するであろう)会社は、定年などにこだわっていないでもっとシニアの活用を考えるべきだと思う。つまり、定年制度を事実上なくす。求人に事欠かない人気企業が定年制度を大事にしたいのはわかるが、求人にアップアップしている会社が自ら足かせをはめる
必要はない。

ただ、給与については、考え直す時が来ているかもしれない。一部ではすでに行われているが、まだまだ過去の制度を引きずっている会社も少なくない。いうまでもないが、勤続年数に比例するのではなく、働きぶりにも応じて給料を決めるべき。若手が成果を出しているならそこの給料を厚くしないといけない。年齢に比例して右肩あがりに給与を上げるのではなく、ピークをもっと前倒しにして結果を出している若手に充てないといけない。優秀であれば、若手もシニアも高くし、そうれでなければ若手もシニアも低くする。そうすると、今は多くの会社が勤続年数に基づいているので、結果的に若手に厚くなる。

仕事の内容や進め方もこれまでとは違うものが求められる。シニアが担当する業務は、管理だけではなく実務もこなし、汗もかく必要がある。(私のように)わがままで偉そうにしているだけでは会社全体がダメになる。それと、物理的年齢と精神年齢は違う。若者のように燃える情熱を継続できるシニアを重用し、他方自分の安全・安定だけを考えヒラメ化している人材はイチから出直してもらうか、お引き取り願うしかない。「過去の栄光を振り返って昨日までのことだけを話す人」と、「これからから何をやろう、何に挑戦しようかと明日以降の話をする人」を区別したい。「今さら~しない(否定形)人」と「これ
から~する(肯定形)人」の違いを知った上での登用が必要である。 

言わずもがなであるが、女性についても能力と気力溢れる人物を勇気を持って登用していきたい。

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