古川裕倫の「いろどり徒然草」8月号

古川裕倫の「いろどり徒然草」8月号

暑中お見舞申し上げます。
古川裕倫です。

坂本竜馬のメルマガをお送りしておりますが、8月は夏休みとさせていただき、
代わりに以下をお届けします。

10年前に「職場で女性が損する理由」(古川裕倫、扶桑社)という新書を
出したのですが、その文庫版「女性が職場でかしこく振る舞う技術」
(古川裕倫、扶桑社)が8月2日に発売になります。
以下は今回加筆したものです。女性向けに書いていますが、本来、
男性に問いたいところです。

「女性部下にネガティブフィードバックができていますか?」セクハラ、
パワハラはいけませんが、言うべきことは言わないといい会社にはなりません。
最近は、嫌われたくない上司が多いようです。

【ネガティブフィードバック】

昭和時代には、同じ価値観を共有することが一般的でした。
「それ違うだろう」「これはかくあるべき」とガンガン言われ、同じ価値観
に納得するしかない時代でした。

時に、それを徹底するために、「バカヤロー、何を言っているんだ」と
いうようなパワハラワードが飛び交っていました。同じ価値観を持つことで、
同じ方向性を求めました。

世界のグローバル企業は、個人の価値観は違うのは当たり前と考えています。
企業理念や行動規範を共有し、同じ方向に向かっています。

ただ、昭和生まれの日本人はそれが苦手です。バカヤローと言わないで、
部下を説得する理念経営ができていないのです。論理的にモノを言うのが苦手
という面もあるでしょう。

論理的ではない人間は、やはり「バカヤロー」と言いたいところでしょうが、
今それを言うとパワハラになる。女性に昔流でモノ言おうものならセクハラとし
て捉えられかねない。

結果、今の多くの上司たちの悩み(課題)は、部下にモノ言えないことです。
本来は、ちゃんとしていることは褒め、できていないところは改善してもらう
ことが企業活動としては当たり前なのですが、褒めることも叱ることも苦手な
昭和人が(私も含めて)多いのです。

私は、管理職向けの企業研修や講演をする時に、挙手してもらうことでそれ
を実感しています。
「部下を褒めるポジティブフィードバックと、改善してほしい点を指摘する
ネガティブフィードバックがどれだけできていますか?」と前置きをしたあと、

「あなたは男性部下にネガティブなことを言えていますか?」
「10割の方、9割の方、8割の方」と順に手を上げてもらいます。

私の経験上、男性部下向けのネガティブフィードバックは、5ー7割ぐらい
できているようです。

「では女性部下にはどれだけネガティブフィードバックができていますか」と
聞くとせいぜい2割ー3割しか言えていないと言う管理職がほとんどです。

上司からネガティブフィードバックを受けることも自分の成長に繋がります。
嫌なことを聞きたくない気持ちはわかりますが、それは一瞬のことであり、ネガ
ティブフィードバックも進んで受けるべきです。ネガティブフィードバックを受
けないのは、損しているのです。

では、どうすればいいか。

答えは、あなたもお持ちと思いますが、自分から言っておけばいいのです。

「ネガティブフィードバックもお願いします。ちゃんと聞いて、泣きも叫びも
しませんから」と笑顔で上司にインプットしておきましょう。


【お知らせ】

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※第12期(2019年10月開講)立志塾の申込み受付を開始しました。
  
 ▼第12期の詳細・お申し込はコチラ
  https://saishi.or.jp/risshijuku/apply.html
    (〆切:9月2日(月)まで)

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古川裕倫の「いろどり徒然草」7月号

竜馬に学ぶビジネスの要諦(第13回)

前回は部下に任せられない理由と(上司か部下かの)責任の所在
について説明したが、どうすれば任せられるかについて説明させて
いただきたい。

■任せるための「責任三原則」

 責任の所在がはっきりしないから任せられない。ここで責任を三
つに分けて、もう少し掘り下げて考えてみたい。だれがどのような
責任を持つかをはっきりさせておくためだ。

結果責任は、上司にある
遂行責任は、部下がとる
報告責任は、部下にある

この「責任三原則」を上司と部下で共有しておくと、先に述べた責
任の問題が一挙に解決し、仕事を任せやすくなる。

 上司たるもの、仕事の責任は本来上司にあることぐらいはわかっ
ているはずだ。ところが、部下が途中で投げ出したり、報告や相談
をしないで勝手に物事を進めたりするから「お前のせいだ」となっ
てしまう。いくら上司がしっかりしていても、このような部下であ
れば、責任を問われたくない。

 反対に、部下が最後まで投げ出ずことなくしっかり遂行し、(結
果だけではなく)経過報告も逐次行っているのであれば、上司は今
何が起きていて部下がどう動こうとしているのかがリアルタイムで
わかるので、必要なアドバイスや軌道修正もできる。そういう状況
下なら上司は責任を取れる。

 部下にしても、何がどこまで自分の責任であるかをわかっていな
いと、うまくいかなかったことを前もって考えてしまい、おいそれ
と「任せてください」などとは言えない。「よかれと思ってやった
のに自分が痛い目に会うなんぞ、まっぴら御免だ」ということにな
ってしまう。

 そうではなくて、「投げ出さない」という遂行責任と、「途中経
過も含めた報告をこまめに行う」という報告責任は部下にある。た
だ、結果責任は上司にある。こういう明確な仕組みができあがって
いれば、新しいことに挑戦したり、思い切った改善に着手したりし
て、前向きな組織とすることができる。

 つまり、上司が部下に仕事を任せるときにこう言えばよい。

 「この仕事は君に任せるので最後までやり遂げて欲しい。結果の
責任は私(上司)にあるから。ただし、報告はしっかりとして欲しい」

■竜馬流の任せ方―上司は部下に手柄を譲れ

『竜馬がゆく』(文春文庫)から引用したい。

「仕事というものは、全部をやってはいけない。八分まではいい。
八分までが困難の道である。あと二分はたれでもできる。その二分
は人にやらせて完成の功を譲ってしまう。そうでなければ大事業と
いうものはできない」(八巻331頁)

先に「責任三原則」を説明したが、それは基礎編である。応用編は
上に引用した文章の中にある。

すなわち「うまくいったら、上司は部下に手柄を譲る」ということだ。

結果責任は上司にあるから、失敗したら責任をとり、成功したら手
柄も上司のものとする。これではいけない。「いい仕事をしてくれ
たね。君のおかげだ」と部下に声をかけ、まさに竜馬が言うように
功を譲るのである。

反対に、「うまくいかなかったら部下も反省する」ことが必要だ。
うまくいかなかったのは上司の責任だと、知らん顔しているようで
はレベルが低い。「ここはしっかりやるべきでした」と具体的に反
省を示すことが大切である。

このように基礎編と応用編ができていると前向きな素晴らしい組織
となる。

 竜馬は、先の言葉の中で、もう一つのことを教えてくれている。
「困難なことは自分がやり、あとは人に任せればよい」ということだ。

難しい仕事はリーダーがやるという気持ちが大切で、「おもしろい
仕事は部下に任せ、嫌な仕事は自分がやる」という思いが特に若手
リーダーには必要だ。ベテランリーダーより経験や知識が不足して
いる分、自分が難しいことや嫌なことに挑戦しないと人はついてこ
ない。これを忘れないでいただきたい。


【お知らせ】

1.女性幹部養成プログラム「立志塾」8月度無料見学会
一流ロールモデルと考える「自分らしいキャリア」と「マネジメント」

2019年8月の第11期立志塾開講にあたり、午後の部を無料でご見学いただけます。

[日時] 2019年8月3日(土)13:00~17:00
[会場] ウィン青山2階E(青山一丁目駅より徒歩1分)
[主催] 一般社団法人彩志義塾
[内容] 1.課題図書から考える、「働く」ということ
       「リーダーシップ」
     2. エキスパートから学ぶ、組織運営の基礎知識
       「事業計画・数値管理」
     3. 会社役員・ロールモデルとの意見交換
       バンダイ株式会社
       執行役員 村瀬和絵氏

 ▼ご見学お申込み
  https://saishi.or.jp/201903082474.html
 
 ▼「立志塾」受講者の声
  https://saishi.or.jp/risshijuku-voice.html

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古川裕倫の「いろどり徒然草」6月号

竜馬に学ぶビジネスの要諦(第12回)
リーダーシップ(2)―完成の功を譲れ

前回は、日々の仕事で部下のモチベーションを高めるには、部下に
仕事を任せることが一番だと申し上げた。任せてもらうことは部下
冥利(みょうり)につきることは経験上ご存じのことと思う。
ところが、これが結構難しい。わかっていてもなかなかできない。
リーダーの大きな悩みでもある。

私自身もこれに大いに悩んだことがある。あるとき、非常に優秀な
部下が「古川さんは、普段は大所高所の話をしますが、時に非常に
ささいな事まで(任せずに)指示することがあります。その基準は
何ですか」とやんわりと笑顔で聞いてきた。「なるほどその通りか
もしれない、言われて初めて知った」と内心で思ったが、残念なが
ら部下への答えは持ち合わせていなかった。

今振り返ってみるとお恥ずかしい限りであり、当時の部下には申し
訳ないことをしたと思う。その後、いろいろ経験して多少なりとも
学んできたので、私なりの答えをご紹介したい。

■仕事を任せられない理由
 
上司が部下に仕事を任せられない理由を研修や会議など多くの場面
で議論した結果は、だいたい次のとおりである。

第1に、部下に十分な能力がないと思うから
第2に、結果が心配だから。部下の失敗は自分の責任となる
第3に、自分でやるほうが早いから

 このほかにも、部下にやり方を説明するのが面倒であるとか、お
もしろい仕事は自分がやりたいからというリーダーとして論外な理
由もあるが、本連載の読者もここに挙げた3点に多少なりとも心当た
りがあるのではないだろうか。

■責任の所在が不明確ゆえに悪循環に入ってしまう

 まず第1の理由。まだ部下の実力が十分ではないと思ってしまうの
で任せられない(任せない)。たしかに、上司は経験も積んでいるし
知識も部下より多い。しかし、ここは自分の経験や知識を基準にする
のではなく、その仕事をするのに部下が「それなりの実力」があるか
ないかを判断基準にすべきである。

もう少し正確にいうと、「それなりの実力」というのは、「十分な
力」でなくても、その基準よりちょっと足りなくても構わない。む
しろ、ちょっと足りないぐらいで任せるのがちょうどいい。

自分の実力より少し高いところに手を伸ばすほうが、自分の成長に
つながる。反対に、自分の実力以下の仕事ばかりしていれば成長は
しない。

 順番が前後するが、第3の理由。自分でやるほうが早いので部下に
任せたくないと考えるリーダーは度量不足だろう。前回申し上げた通
り、部下の成長のためには「待つのも(上司の)仕事」なのである。

第2の「部下の失敗は自分の責任」が最大の問題である。これがネッ
クになって部下に任せられないことが実際には多い。

上司からすると、「任せたけれど、お前がちゃんとやらないし(遂行
しない)、(経過も含めた)報告も少ないじゃないか」、だから上司
として責任は取れない、ということになる。

一方の部下からすると、「あなたがやれと言うからやったんです。
うまくいかないと自分(部下)が悪いと言われるのはたまらない」
ということになってしまう。

これは、まさに責任の所在が不明確だからではないか。その結果、
「上司は任せない、部下は余計なことはしない」、「上司は何から
何までやらなければいけない、しがたって部下は育たない」という
悪いスパイラルに入ってしまう。

これでは新しい仕事に挑戦できず、過去の成功例だけを踏襲するこ
ととなり、成長もしなければダイナミックな会社にもなれない。

では、どうすれば責任が明確になるのか。そして、部下に任せると
いうことがしっかりできるようになるのか。
紙面の都合で、任せるにはどうすればいいかについては、次号に譲りたい。
(「その答えはコマーシャルの後で」という安物のテレビ番組のようで恐縮です)


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1.女性幹部養成プログラム「立志塾」8月度無料見学会
一流ロールモデルと考える「自分らしいキャリア」と「マネジメント」

2019年8月の第11期立志塾開講にあたり、午後の部を無料でご見学いただけます。

[日時] 2019年8月3日(土)13:00~17:00
[会場] ウィン青山2階E(青山一丁目駅より徒歩1分)
[主催] 一般社団法人彩志義塾
[内容] 1.課題図書から考える、「働く」ということ
       「リーダーシップ」
     2. エキスパートから学ぶ、組織運営の基礎知識
       「事業計画・数値管理」
     3. 会社役員・ロールモデルとの意見交換
       バンダイ株式会社
       執行役員 村瀬和絵氏

 ▼ご見学お申込み
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 ▼「立志塾」受講者の声
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古川裕倫の「いろどり徒然草」5月号

竜馬に学ぶビジネスの要諦(第11回)

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竜馬に学ぶビジネスの要諦(第11回)
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■部下のモチベーションを高めるために

部下のモチベーションを高めること、すなわち、やる気を引き出すために何が必要であるか。私は以下の3点ではないかと思う。

1.自分を磨き高め、組織に貢献すると自分に結果が返ってくることを知る
2.仕事の喜びを知る
3.仕事を任せる

上記1については、前にも述べたが、滅私奉公をするのではなく、自分を磨き高めて、組織に貢献すれば、結果が自分に返ってくる。それを知っておくこと。

上記2は、「どんな仕事にも喜びがあり、それを知っておくこと」である。大学生が憧(あこが)れるような「つぶれない会社」「給料が高い会社」「休みが取れる会社」に働くことだけが喜びではない。
鉄鋼会社に勤める人は、鉄板自体が好きか、肥料会社の社員が肥料を枕元に置いて寝たいほど製品そのものが好きであろうか。そんなことはない。製品やサービスがどのように活用されて人に喜ばれるか。そういう満足感や達成感が、仕事の喜びなのだ。

例えば、飲食業であれば、「おいしい」とお客様が喜んでくれること。小売業であれば、「いい買い物ができた」とお客様が微笑(ほほえ)んでくれること。
メーカーであれば、製品がどう活用され喜んでもらえるかということである。
昔、建設会社のテレビコマーシャルで、赤銅色に日焼けした現場作業員が、
「あの橋は、オレが作ったんだ」といい顔をしていたのがあった。まさにこういう満足感が仕事の喜びである。
機会があるときに、部下と仕事の喜びについて語り、共有しておいていただきたい。

そして、仕事を任せること。上記1、2は考え方であるが、仕事を任せることが日々の業務において一番部下のモチベーションを高めるのではないだろうか。
しかし、これが難しい。任せられない理由と、どうすれば任せられるかは次回に譲りたい。


【お知らせ】

1.女性幹部養成プログラム「立志塾」5月度無料見学会
一流ロールモデルと考える「自分らしいキャリア」と「マネジメント」

2019年5月の第11期立志塾開講にあたり、午後の部を無料でご見学いただけます。

[日時] 2019年6月8日(土)13:00~17:00
[会場] ウィン青山2階E(青山一丁目駅より徒歩1分)
[主催] 一般社団法人彩志義塾
[内容] 1.課題図書から考える、「働く」ということ
       「生産性」
     2. エキスパートから学ぶ、組織運営の基礎知識
       「役員・取締役・取締役会」
     3. 会社役員・ロールモデルとの意見交換
       外資金融女性役員

 ▼ご見学お申込み
  https://saishi.or.jp/risshijuku/muryo-kengakukai.html
 
 ▼「立志塾」受講者の声
  https://saishi.or.jp/risshijuku-voice.html

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古川裕倫の「いろどり徒然草」4月号

竜馬に学ぶビジネスの要諦(第10回)

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竜馬に学ぶビジネスの要諦(第10回)
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■竜馬のリーダーシップ(その1)
これまでに、竜馬の大きな志、高い人間力、そして並外れた行動力などをご紹介してきた。目先の小事にとらわれることなく、竜馬のそうした能力が幕臣勝海舟や西郷隆盛、桂小五郎、高杉晋作など雄藩の重鎮を動かした原動力となった。今回は、竜馬の部下に対する指導力、すなわちリーダーシップについて見てみたい。

一介の脱藩浪士がこれらの人々の心を動かすことは大変なことである。大きな事を語るだけではただのホラ吹きだが、竜馬は時流を読んで日本のあるべき姿を考え、人を説得する力を持ち合わせていた。

実力のある薩長がいがみ合っているときではない。徳川幕府を支持するかしないかの問題でもない。竜馬が考えたことは、どのように国の自主独立を守るか、であった。それを論じ、薩長同盟を実現させ、後の大政奉還に導いたのである。

繰り返しになるが、初対面の人間に信頼され、重鎮を説得できたのは、竜馬の人間力が相当高かったからに違いない。他人に信頼される人柄、いい笑顔、人に対する優しさや情熱がそろっていたのだろう。

今流に言うと、他社のトップを自在に動かす人間力あふれる実力者ということになる。今回は、竜馬の部下に対する指導力、すなわちリーダーシップについて見てみたい。

■「四万十川の堤防工事で発揮した竜馬のリーダーシップ」

竜馬が18歳のとき、四万十川の堤防工事を手伝うことになった。工事を10区ほどに分け、竜馬はその一区の長を担当した。ほかの区では人夫が怠けもののため工事がはかどらなのだが、竜馬の区はばかに早く進む。普請奉行の池田虎之進が見に来ると、竜馬はいつも松の木の下で膝(ひざ)を抱えて居眠りをしている。

他の区より、半分の日数で仕あがってしまった。池田虎之進がくわしく訊くと、竜馬はまず仕事の責任者を巧みにえらび、それぞれ分掌させ、競争させた。
「あとはなにもせぬのか」
「毎日出来ぐあいを検分して、褒美をやります」
『竜馬がゆく』(司馬遼太郎、文春文庫、三巻134頁)
 
ピーター・ドラッカーは、リーダーの一番の仕事は、「目標を明確にして成果を上げること」だと言っている。

竜馬は、仕事の責任者を適材適所で選び、彼らに任せて競争させた。日々その結果を検証し、評価して褒章をやっている。そして、成果を上げた。

適材適所の人事をするには人を見る目が必要である。人はいいところもあればそうでないところもある。十把一からげで人を見ないで、よいところを見つけてそれを引き出す。そして、任せる。任せっぱなしではなく、結果を検証する。

言うまでもなく、公正な評価をすることはリーダーの大切な仕事である。えこひいきや好き嫌いで人を評価すれば、それこそ部下からの不信を買ってリーダー失格となってしまう。

褒美をやるといっても金品だけではなかったはずだ。「よくやってくれた」と言って、心からの感謝の念が竜馬の顔にあふれていたに違いない。これこそが人間力である。

いくら頭がよくても知識があっても、人間力が少ない人には部下はついてこない。

たしかに、『竜馬がゆく』にある上記3点は大切であるが、物語全体に散りばめられている竜馬の高い人間力があることが大前提である。毎日居眠りをしている普通の上司には部下は付いていかないからだ。

■「本当に龍馬は居眠りをしていたのだろうか」 

先ほどの続きであるが、竜馬が担当した工事の場所は、今でも「竜馬の居眠り堤」として語り継がれている。

竜馬が本当に居眠りをしていたかどうか、私は極めて疑問に思っている。現場に張り付いて部下にアレコレと言うことはなかっただろう。むしろ、部下に任せたら、仕事が済むまで待っていいたのではないか。

私が若いころ、お世話になった上司がいる。あるとき私が任せられた仕事をしていると、どうもその上司の様子がおかしい。何もしないでボーッとしているが、チラチラとこちらを見ている気配がする。私は思い切って聞いてみた。

「私の仕事が遅いのでしょうか」
「その通りだ。でも、待つのも仕事だ。ワッハッハ」

仕事が遅いと全面肯定されたのは辛(つら)かったが、「待つのもの仕事」だと聞いてとても嬉しかった。「ようし、効率を上げてやるぞ」と心に誓った。恥ずかしながら、私は決して優秀な社員ではなかったが、がむしゃらに仕事をするようになったのは、この上司のおかげである。

話を戻すと、居眠りをずっとしている上司に部下はついてはいかない。任せた以上、アレコレ言わずに寝たフリをしていただけだと私は思う。

部下に任せたら、しっかり任せることが大切だと思う。


【お知らせ】

1.女性幹部養成プログラム「立志塾」5月度無料見学会
一流ロールモデルと考える「自分らしいキャリア」と「マネジメント」

2019年5月の第11期立志塾開講にあたり、午後の部を無料でご見学いただけます。

[日時] 2019年5月11日(土)13:00~17:00
[会場] ウィン青山2階E(青山一丁目駅より徒歩1分)
[主催] 一般社団法人彩志義塾
[内容] 1.課題図書から考える、「働く」ということ
       「組織改革」
     2. エキスパートから学ぶ、組織運営の基礎知識
       「財務諸表」
     3. 会社役員・ロールモデルとの意見交換
       シンコム・システムズ・ジャパン株式会社
       マネージング・ディレクター 石村弘子氏

 ▼ご見学お申込み
  https://saishi.or.jp/risshijuku/muryo-kengakukai.html
 
 ▼「立志塾」受講者の声
  https://saishi.or.jp/risshijuku-voice.html

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